<参考36>  河川敷の夏から秋にかけての草木と花


     【カヤツリグサ科】  カヤツリグサ属 : イガガヤツリ・ハマスゲ

 

カヤツリグサ科はイネ科に似た線状葉を有し、花も花びらがなく、鱗片が重なり合った小穂(しょうすい)から成り、鱗片の隙間から花粉を飛ばす様がイネ科に似ているなど、イネ科と区別しずらく、何かにつけ両科は対比して説明されることが多い。ただカヤツリグサ科にはイネ科には無い特徴として、「中実で断面が三角形をした茎を持つ」種類が多いことは参考になる。
イネ科には古来から食用にされた穀類が多く、また大型のものは萱(かや)と総称され、茅葺屋根には欠かせない材料だった。茅葺はカヤという特異な種類があるわけではなく、山間部ではススキが主体とされ、平野部ではヨシも利用された。(世界遺産の白川郷合掌造りの萱の葺き替え時は、今では材料が不足し、ススキの多くが富士山の裾野で刈られていると聞いたことがある。)
一方のカヤツリグサ科はイネ科ほどには人の生活に密着していないが、単なる雑草という存在だったわけではない。

カヤツリグサ科はスゲ属のものが種類としては圧倒的に多いが、カサスゲなどは昔、笠や蓑(みの)などあるいは藁(わら)細工の材料として利用された。ゴザとかムシロについても、高級なものは畳表と同じイグサを織ったものだが、その昔にはカヤツリグサ科の大形種が用いられたとされる。
なお古代エジプトで紙の起源となった有名なパピルスはカヤツリグサ科カヤツリグサ属の一種である。

左のイガガヤツリは、左岸の六郷橋上手の堤防下で、通路と河川敷にあるゴルフ打ちっ放しの敷地を仕切るゴルフ場側の自動車道との仕切り線上にあったものを2014年10月初旬に撮った。何故かいつもここだけにあって、数十メートル程度六郷橋の下に向かって続いている。通路に挟まれた線上で、こんなところにと思って見過ごしがちだが、JRから六郷橋までの間の橋梁群の下は、ここだけというような種類が散見される不思議な場所になっている。

イガガヤツリは海岸の近くに出るものだそうだが、この辺りではここ以外では見かけない。河川敷は総じて低く湿気勝ちだが、ここが特に湿った場所ということではなく、何故ここに特有の存在になっているのか不明だ。
丈は低く地面に線状の苞葉が葉のように茂る中から、5〜10センチ程度の長さに花柄が伸び、花茎の先端に花序が一つ付く。花冠は長さ1センチ余りの偏平で先が尖った披針形の小穂が放射形に密集して形成され、全体に赤錆のような地味な色をしている。
株は単発ではなくある程度まとまって存在するが、(こんな場所に生えたせいか)丈が低く地面に平行で、形にメリケンガヤツリのような立体感が無く、花色も含め全体に地味な感じで目立ちにくい。ここはよく通る場所だが、指摘されるまでこんなところにカヤツリグサがあることには全く気が付かなかった。注意して見ないと見過ごしてしまう。



 


 

 





 


 

     【カヤツリグサ科】  ヒメクグ属 : ヒメクグ

 






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