<参考26> 河川敷の春から初夏にかけての草木と花
【シソ科】 アキギリ属 : ミゾコウジュ
【シソ科】 ニガクサ属 : ニガクサ
ウラギクをやっていた当時は、ヨシ原に入る小道の入口がこの散策路の途中にあったので、この道は結構頻繁に通ったが、現在では、わざわざ六郷橋下を経由する観察路を採用しない限り、堤防下の通路を通って下ってしまうのでこの道は通らない。
【シソ科】 ハッカ属 : マルバハッカ
【シソ科】 トウバナ属 : トウバナ
その後再度探しに行ったが、何の目印も確認していなかったため、周囲の草丈が伸びて見難くなったこともあり、結局見つけ出すことは出来なかった。
2枚目から下の4枚は2015年5月20日に撮影したもの。
ミゾコウジュは越年草で、前年の秋に発芽し、翌年の5月頃に花を咲かせる。一年草ということもあるが、この種は芽生えて生育する場所が毎年定まらず、むしろ前年にあった場所には翌年は見られなくなることの方が多い。
増水によって冠水したり、浸蝕を受けたような攪乱後の場所に先駆的に繁栄するケースがまゝ見られらしいので、河川敷の改修が進んで、環境が整備しきられ自然な立地環境が失われていくに従い、次第に姿を消し絶滅が危惧されるような種になる。
最近は橋脚の耐震工事などが行われ、避溢橋の下の周辺は駐車場として利用されたりしていることもあり、橋の下は立入禁止にされているが、この写真を撮った当時は、バイオリン公園から橋の下に行く間に仕切りは無く、避溢橋の下は単に公園の芝地に続く(湿気た)雑草帯という状態だった。
ここにミゾコウジュが出ていると教わった時期が既に6月に入っていた頃で、花は終末期になっていて、花の写真は十分には撮れなかった。案の定翌年はもうこの場所ではミゾコウジュは見られず、辺りから気配は消えていた。その後この界隈でで見ることはなく、今では橋の下の環境も大きく変わってしまった。
六郷橋側の藪の中にはヤエムグラの蔓がすごく、赤紫に色付いた実と緑色の実が鈴生りになって付いていた。沼を過ぎ京急側の藪に近づくと、さっき見てきた草に似た草が、3枚目の写真のように花穂を伸ばしている姿を多く見た。中には次の4枚目にあるように幾つもの花穂が密接し、しかも赤く色づいているような大株もあった。
葉はやや黄ばんだような感じで、中心部の対生した葉による十字形もそれほど際立ってはいなかったが、葉縁は鋸歯になっていて、葉脈が深く彫り込まれたような表面の印象はそっくり同じだった。ここでは花穂が伸びきったものが多かったが、この株で花穂は出始めの状態で、この姿を見て同じ草種だと確信した。
ここからの3枚がその時の写真。蕾は膨らんではいるが、唇形花を開いているものは皆無で、多くの花穂は赤味が強かった。
1週間前の帰途にゴルフの裏に入ってニガクサを見付けた訳だが、あの日は往きにも川沿いの小道を通って六郷橋下に出て、この散策路を通って六郷水門方向に向かっている。この道ではヒルガオやアカメガシワの雌花(川下にある直立護岸の上に立つアカメガシワとは別に、2013年にこの通り沿いで見付けたもので、エノキの大木に隠れるような感じで気付きにくかったが、結構大きなものが数本並んでいる)を撮ったりしている。特にヒルガオは全く同じ草薮で撮っているので、何故ニガクサに気が付かなかったのか不思議というしかない。
この通り沿いに出ているニガクサも、上に1枚とズームを1枚を載せたように、花穂が立って蕾が膨らみつつあるという株も無い訳ではなかったが、多くの株ではここから下に8枚載せたように、花穂全体としては未だ若い蕾が多くあっても、下の方の成熟した蕾から順次、部分的に花が開いていくという花穂の形態をとる株の方が多く見られた。
ニガクサはランナー(走出枝)或は匍匐茎(匍匐枝)と呼ばれる栄養器官による無性生殖によって繁殖する多年草。ランナーは地上を匍匐する地下茎の一種で、これが先端で発根して子株を作り独立することで、新たな次世代の個体を作る能力がある。このような栄養繁殖を行う例としては、ユキノシタ、ジュウニヒトエ、オランダイチゴなどが有名。(匍匐枝のうち細いものはストロンと呼ばれる場合もある。ストロンとしてはジャガイモが良く知られる。ジャガイモ自身はストロンの先端が太って出来たものである。)
メシベとオシベの長さはほゞ同等で、メシベの先端は二股に分岐し、オシベの先端には茶色の葯が認められる。十分に自家受粉する位置関係だが実態がどうなっているかは不明。ニガクサは主としてランナーによる栄養繁殖によって増えるらしいが、果実も作るようなので有性生殖も行っている可能性がある。
誰が刈ったのか不明だが、刈り方は雑な印象で、丁寧に刈ったというものではなく、嫌々刈らされたという感じだった。然しこの除草は上手に遡っていくと、昭和10年頃の異常掘削に基因する塩湿地跡の角を回り、かつて異常掘削の影響で浸食された区間(六郷橋まで)に沿って行く「ニガクサ通り」にまで及び、ここでは幅50センチ程度まで刈取られていた。
そこで更に3日後の7月11日には、ゴルフ打ちっ放しの奥のフェンス裏にあったニガクサはどうなったのか見に行くことにした。この日は台風8号明けの猛暑で本当は出たくなかったが、マンションのトランス交換とかで、かねてより日中の停電が予告されていたので、蒸し風呂のような室内に居ても苦痛ということもあって、渋々の観察行きだった。
この頃ヤブガラシの花を撮ることに集中していて、その目的もあった。ヤブガラシの花は咲くと間もなく4枚の花弁が脱落し、4本のオシベも無くなってしまう。そうして通常見られる花は、蜜たっぷりの花盤の中央にメシベが立つだけの姿で、蜜を求めて蟻が猛烈にたかっているのが普通である。そこで何とかして花弁やオシベが残っている段階の花を撮りたいと、六郷橋周辺で目の焦点合わせが音を上げるまで、ヤブガラシの花を徹底的に調べていたのである。
ニガクサは正に爛熟状態だった。そもそも此処のニガクサはオギなどの大型の雑草と競合しているので、丈は2メートル近いものまである大型で、そのため花穂も何本もの集合体になっていて大きく、それが全て開花して大きな花を形成していた。(ニガクサ通りのニガクサの丈は50センチ程度で、花穂も精々2、3本が付く程度で、単独ものも多かった。)
色はそれほど綺麗という印象ではなく、このような高い草薮の中で伸びきったような恰好を強いられているので、あまり良い環境とは言えないのかも知れない。花の全体を収めた写真は、この大きさにしては良く分からないものになってしまうので、精々2枚に止めたが、画面に入りきらないような大きな花が多かった。
これは2013年にガス橋下手の荒れ地の中で、カキドオシの群生と隣接してかなり広い群生地を形成していた。周囲はクサヨシを主とする深い草薮だったが、周囲には強い香気が漂い、いかにも薄荷のようなものが生えていることが分かる状況だった。
長楕円形の葉は対生し、浅く茎を抱く。葉縁には小さな半円状の鋸歯があり、葉の表面にはシワが目立つ特徴がある。裏面は白色の毛が密生する。
花穂を撮っているのは7月中旬で、ここにもカキドオシと同様、ナナホシテントウがあちこちに見られた。
然し7月中旬にはもう至る所がクズとオギの深い藪となり、クズの上に辛うじて出て見えるのは、食用カンナとブッドレアだけだった。ダキハアレチハナガサももう覆われてしまって見当たらなかった。そんな中で前年に見ていたマルバハッカが一定程度の領域を確保し芳香を放っていたのには何かホッとするやら感心するやら。
以下の5枚の写真は2014年7月中旬の撮影。前年に撮った時期と同じであるにも拘わらず、この年のオギとクズの藪の広がりや深さは前年とは比較にならない物凄さだった。
舌状花の花弁は2分し、下側は更に3分しているのが分かる程度で、花の拡大写真を撮るのは至難の業だ。
前の京急鉄橋下ではただ小さいとしか感じなかったが、ここで塔状の花序が林立しているのを見て、こういうものなのかと初めてこの花の実態を把握した。
何とか花のズームを撮ろうとして出直したものだが、相変わらず花数は少なく、一塔に一花という感じで、段数の少ない若い花でも、2,3が咲いていればめっけものという程度で、5月11日に最初の写真を京急の鉄橋下で撮った時の株が、一番多くの花を咲かせていたことが今更ながらに悔やまれた。