<参考26>  河川敷の春から初夏にかけての草木と花


     【マメ科】  ソラマメ属 : ヤハズエンドウ (カラスノエンドウ)・ナヨクサフジ

 

4月にこの辺りでハマダイコンに次いで多い花は、マメ科ソラマメ属のヤハズエンドウ(矢筈豌豆:別名カラスノエンドウ)である。蔓草で群生する。この種には花が白いものもあるそうだが、河川敷ではごく普通のピンク色のものしか見ない。
ヤハズエンドウの小さい花は、マメ類独特の蝶のような形をしている。(薄いピンクの部分を旗弁、濃いピンクの部分を翼弁といい、翼弁の中にひっくり返した舟底のような形の竜骨弁がある。)
この花は形が蝶に似ているだけでなく、日が出ると開き、日が暮れると閉じる開閉挙動をしているのではないかと思わせる。
別名のカラスノエンドウというのは、豆サヤが黒く熟すためとも言われるが、野草名ではカラスとスズメは大きさを示す常套語として用いられ、実際にこれより小さいスズメノエンドウというのがあり、カとスの中間の大きさのものにカスマ(間)草という名前が付いたものまである。

大きな面積を占拠しているケースもあるが、他の草の隙間に入り込んで隙間を埋めるように拡がっていることが多い。羽状複葉の先端は巻きヒゲ状になっているが、河川敷では巻き上るような背丈の高い相手はなく、地を這うように互いに巻き付き合って、鳥の巣のような格好になっているケースも見られる。
矢筈(やはず)というのは、矢を弓につがえるとき、弦に掛ける末端部のことで、名前の意味は矢筈に似た二又ないし窪み形状をいう。ヤハズエンドウの場合小葉の先が窪んでいることに由来する。
河川敷では見ないが、同じマメ科にヤハズソウ(矢筈草)というのもある。複葉は3枚の小葉を出し、花期は初秋でヤハズエンドウと紛らわしい点は名前だけ。こちらは葉の先を引張ると、葉脈に添って矢筈のような格好にちぎれることからその名が付けられた。
春の野草は一般にそうだが、ヤハズエンドウも水際の湿った場所から堤防の法面まで広範囲に分布する。




 


 












 

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